セラミックアート招き猫展●第8回…2004年
出展:湯川れい子


●ジャッケルのこと●
 実は、猫、大嫌いだったんです。猫って吐いたりするでしょう。祖母が飼っていた猫がネズミを獲って来たリするのを見て、本当にゾッとするほど嫌いでした。
 ずっと犬派で、犬と散歩をしているときに、紙袋に入って捨てられていたのが、生まれてまもなくのジャッケルでした。今にも死にそうな赤ちゃん猫を、犬が見つけたんです。仕方なく家に連れて帰って来ました。見るのも触るのも駄目なくらいだったのに・・・・・。ミルクをやって懸命に育てましたよ。体が弱くて、ずいぶん病院にも通いましたし、私が浣腸してやったこともありました。
 このジャッケルが本当にいい猫で、私のことをいつもずっと見ているの。帰ってくると玄関先できちんと座って待っててくれて。ジャッケルと暮らして、猫に対しての目が開かれたというんでしょうか、大好きになりました。彼は14歳4ヵ月で逝きましたけれど、いま家には5匹の猫がいます。みんな保護した野良ちゃんばかりです。
 残念なことに、最近、エジプトやギリシャなど、かつては猫を大切にしていた国でも、猫が冷遇されているのを目にします。闇の中でも輝く瞳を持つ猫は、太陽や神と結びつけられた存在だったのに、そうしたことが薄れて来たのかしら。日本でもそうですが、猫をはじめ、動物が生きにくい世の中になってきたと感じています。ということは、人間も生きにくいということです。
 いま私は、「犬や猫、身のまわりの動物を救おう」という動物保護プロジェクト「NOAHS(ノアーズ)」の設立準備にかかわっています。
 地球という大きな「ノアの箱船」に乗り組んでいるすべての生きものたちの幸福を招いてくれるように、という私の願いをジャッケルに託しました。
湯川れい子(作詞家 音楽評論家)
 瀬戸の優れた製陶技術を駆使して、さまざまなジャンルで活躍中のアーティストにオリジナル招き猫を創作してもらう「セラミックアート展」。歴史に裏打ちされた瀬戸のやきもの技法とアーティストの感性が、新たな創作招き猫を生みだします。招き猫という「福を願うかたち」をどのように表現するか、興味は尽きません。
 第8回目を迎える本年は、猫好きでも知られる音楽評論家で作詞家としても活躍されている湯川れい子さんが、14年共に暮らした愛猫「ジャッケル」をモデルにデザインしてくださいました。

▲作品制作に用いた型の展示

▲左から「ジャッケルのこと」パネル/セラミックアート作品/ジャッケルのポートレート
「ジャッケル」という珍しい名前は、カラスを主人公にしたアメリカのアニメーション「ヘッケルとジャッケル」から来ているのだそうです。
 「とても性格のいい猫でした」というジャッケルの白黒の毛並みを生かし、ちょっとリアルな感じの招き猫になりました。常に前向きでありたいと、立ち上がって両手で招いているポーズです。さらに胸には世界中の生き物の幸福を願って「LOVE」のペンダントをつけています。
 ジャッケルに出会う前は猫が苦手だったという湯川さんを、大の猫好きに変えてしまったジャッケルのLOVEパワーを感じてください。