1999年の7月、急病で病床に伏していたとき、もりわじん氏から一冊の小さなノートが届いた。中を開けると小さな文字で何やらビッシリ書いてあった。一番から百番まであり、一つ一つに晴天、大大吉、無理するな、超最高等の見出しがあり、どうやらおみくじの文面のようだ。読み進めていくうちに、なんか気持ちが穏やかになってきた。「いつ退院できるのだろうか、仕事は‥‥」と思い悩んでいた私だが、まあ何とかなるという心持ちになった。これを、もりわじん氏は一日で書き上げたと聞いてびっくりした。

 この、おみくじノートのお見舞いがもりわじん氏の新たな作品を生んだ。私が退院してから9月にもりわじん氏の個展の企画が持ち上がり、その時、「おみくじ猫、100体を創りませんか‥」という言葉が、つい私の口からでてしまった。個展まであと2ヵ月、無理と思いながら‥‥。すると、もりわじん氏から即座に「面白い、やってみましょう」という返事が返ってきた。

 なんと、一ヵ月半で、全て新作100種類のおみくじ猫の立体作品が完成! 神わざとしか言いようがないと言いたいところだが、アーチストもりわじん氏が創りだしたのである。

 1999年11月、東京青梅の住吉神社でもりわじん個展、第一回「おみくじ猫百覧会」、大反響を呼び無事終了。

 この一連の「事件」は、まさに、クリエィティブ。創作とはいかなるものかを物語っているように思えます。人は10年思い悩んでもできないことが、ある環境や、思いがけないきっかけで偶然と思えるように、なんなく生まれてしまうのです。もちろんそれは日ごろの蓄積・修練が必要ですが。クリエィティブは、日常生活の時間やお金という人間が生み出したものさしでは測れない。やはり、クリエィティブには神が宿るのかもしれません。人の能力、創作力は測り知れないものがあると、改めて痛感する「事件」でした。

 今、おみくじノートを読み直してみても、新鮮です。まだまだ、多くの人々にこの「おみくじ猫百覧会」に接してもらいたいと思っています。

 後日、もりわじん氏は「でき上がって読み返してみると、一番から百番までが、一歳から百歳までの『それぞれの年齢とともに、背負ってゆく心の荷物をおろすには‥』を書いているように思えた。」と語っています。「おみくじ猫百覧会」は、何かあったとき、退屈なときに、時々開いてみてください。きっと何かが変わると思います。

(日本招猫倶楽部 世話役 板東寛司)